チェルノブイリ原発の停電
例えば、以下のような西側のメディア報道を見る限り、
IAEA やウクライナ政府、ウクライナの国立原子力発電所や原子力規制当局SNRIUなどの発表を中心に書かれており、
ロシア側のメディアが発信する情報はほとんど見当たりません。
【3月9日 AFP】(更新)ウクライナの送電大手ウクレネルゴ(Ukrenergo)は9日、ロシア軍に占拠されているチェルノブイリ(Chernobyl)原子力発電所と施設の保安装置への電力供給が完全に停止していると明らかにした。ただ国際原子力機関(IAEA)は「安全への重大な影響」はないとしている。
ウクレネルゴはフェイスブック(Facebook)を通じ、チェルノブイリ原発は「完全に電力供給網との接続が断たれている」とし、現地で軍事作戦が続いているため「復旧作業は不可能」と説明。
IAEAはツイッター(Twitter)への投稿で、ウクライナから停電について報告があったとした上で、「本件でIAEAは、安全への重大な影響があるとは認識していない」との見解を示した。(c)AFP
9日といえば、
ザポリージャ原発のウクライナ兵が武器を捨て帰宅を許されて、ロシア国家警備隊の完全管理下に置かれた日です。
そして、敷地内に米国製も含めた大量の武器が見つかり、
核燃料をロシア製からアメリカ製に変更する実験が行われていたこと、
11日に、ウクライナ原子力発電公社が、ロシアからの核燃料購入を完全に停止したことを、
こちらに書きました。


1986年のチェルノブイリ原発事故や、2011年の東電福島原発事故の再来という悪夢に怯えるようになった
ロシアのパンコフ国防副大臣:
ウクライナの民族主義者が、またもや極めて危険な挑発行為をおこなったことをお伝えしなければならないのは、大変遺憾である。
彼らはチェルノブイリ原子力発電所で、電力を供給する変電所と送電線に危害を与えた。ロシアの専門家は、バックアップのディーゼル発電機の電源に切り替えるという迅速な措置をとった。
ウクライナ側は現在、修理の手配を避けるために全力を尽くしている。
ロシアのソローキン・エネルギー副大臣:
ウクライナの民族主義者の攻撃を受けたチェルノブイリ原子力発電所への電力供給を回復するため、
ベラルーシ側が既に、ベラルーシ送電網からの常時接続による電力供給復旧の準備を速やかに行っている。
3月13日(日)、ウクライナのハルシュチェンコ・エネルギー相が、
「ウクライナ電力公社(Ukrenergo)の専門家と、我が国の原子力専門家、電気技師の並々ならぬ努力により、
本日、チェルノブイリ原子力発電所への電力供給が再開された」とフェイスブックに書き込んだそうで、
一般的には、13日再開が公式発表のような扱いで報道されているようです。
一方、3月10日のInterfaxによると
(ソ連時代に使われなくなった古い送電線で、ベラルーシとつながっていて良かったですね!)
ロシアのグラブチャク・エネルギー副大臣が10日、
「ベラルーシがチェルノブイリ原子力発電所に電力を供給した」と、記者団に語った。
⬇️
ロシア国防省は、チェルノブイリ原発付近の損傷した送電線を、ウクライナのチームが修理することを許可したと発表。
⬆️
ちなみにウクライナの原子力規制当局SNRIUは、
すなわち、復旧したという報告がまだないのです。
「グロッシ事務局長が
同原発の電力が復旧したという報告を承知しており、確認を取っているところだと述べた」と、
ウクライナの13日とは異なり、10日の復旧をほのめかしていますが、
誰が報告したのかがわかりません。
大抵、「ウクライナ当局からの報告」などと書かれているので、ここだけ不自然な印象を受けます。
しかも、SNRIU、ウクライナの大臣やIAEAが、
「ベラルーシが電力を供給した」と発表しないのはなぜでしょうか。
再度の停電と復旧
14日にドイツで、「チェルノブイリ原発が再度停電」というニュースがありました。
ウクライナの電力会社は、9日の停電同様「ロシア軍が電線を破損した」と言ったようですが、
この件では、ロシアからの発表は見つかりませんでしたが、
15日にベラルーシのエネルギー省が発表したInterfaxの報道がありました。
「チェルノブイリ原子力発電所への電力供給は完全に復旧している。
現在、ベラルーシの電力網から同原発の施設に電力が供給されている」
ロシアとベラルーシの協同は、とても興味深いです。
チェルノブイリ原発で核兵器製造?
RTの記事「疑惑:ウクライナが米国から兵器級プルトニウムを受け取った疑い」に、驚くことが書かれていました。
放射線量が高いチェルノブイリ原発の一帯では、カムフラージュできるため、
汚い爆弾の製造とプルトニウムの抽出の両方がおこなわれていたようだ。
この記事はとても長いので、ウクライナの 核武装についてはまた別に書きたいと思います。
チェルノブイリ原発周辺の放射線量上昇に関するドイツの報道
ウクライナ原子力当局の見方
「放射線レベルが上昇したのは、軍の大型車両が移動し、放射性物質の粉塵が舞い上がったため」
を鵜呑みにしてしまいましたが、
かなり高い数値になったのは、
毎時最大9.46マイクロシーベルトとあって、
上図の毎時60マイクロシーベルト前後の値が載っていないのは、
「規制当局が報告した毎時最大9.46マイクロシーベルトという数値は低く、
立ち入り禁止区域が設定されて以来測定された運用範囲内にとどまっている」とIAEAは述べている。
・オンラインで公開されている立ち入り禁止区域の自動放射線モニタリングシステムのデータにおいて、
相当数の観測地点でガンマ線量率が管理レベル(赤い点)を超えた。
・この領域での占領と軍事戦闘のために、立ち入り禁止区域の放射線バックグラウンドの変化の理由を確定することは、現在のところ不可能。
・エコセンターの専門家は、多数の無線重機が立ち入り禁止区域を移動したことによる土壌の表層の乱れや、大気汚染の増加によるものと考えている。
・チェルノブイリの核施設などの状態に変化はない。
とだけあって、数値は書かれていません。
公式に発表する内容を鵜呑みにしないよう気を付けたいと思います。
国防省の報道官は、
民族主義的な組織や他のテロ組織による核の挑発を防ぐため、
ロシア空軍の隊員がチェルノブイリ原子力発電所を警備し、
原子力発電所警備大隊のウクライナ人と共同で行動する旨を述べました。
ロシアは「我々も原子力発電所の専門家も、1日に6回、放射線チェックを実施している」と、
2月4日、ウクライナ内務省がチェルノブイリ原発周辺の立ち入り禁止区域で戦術・特別演習を実施したことです。
ロシアのウクライナ侵攻はすでに懸念されており、
この区域はロシアにとって首都キエフ侵攻への最短距離と注目されていました。
国防相、陸軍の高官数名、警察、州兵、救急隊、国家警備隊、市民保護局の部隊などが参加し、
内務大臣は、「チェルノブイリ原子力発電所周辺の立ち入り禁止区域でこの規模の演習は初めてである」と強調したそうです。
出席した外国の大使とは、どこの国でしょうか。
練習・訓練内容は、航空偵察、街頭戦闘、退却する敵の破壊、建物の襲撃とその後の負傷者の避難、地雷除去の訓練など。
スナイパーもいたとか。
当局が公開したビデオでは、整地されたプリピャチ市内で迫撃砲が使用され、装甲車に乗った国家警備隊が前進する様子が映し出されたといいます。