2022年03月16日

ウクライナのチェルノブイリ原発で起きていること

(最終更新:2022年3月18日 画像追加)
ロシアがウクライナ軍事特別作戦を開始してから、
ウクライナ側からとロシア側から発信される情報内容の違いが目立ちます。


チェルノブイリ原発の停電


例えば、以下のような西側のメディア報道を見る限り、

IAEA やウクライナ政府、ウクライナの国立原子力発電所や原子力規制当局SNRIUなどの発表を中心に書かれており、

ロシア側のメディアが発信する情報はほとんど見当たりません。

【3月9日 AFP】(更新)ウクライナの送電大手ウクレネルゴ(Ukrenergo)は9日、ロシア軍に占拠されているチェルノブイリ(Chernobyl)原子力発電所と施設の保安装置への電力供給が完全に停止していると明らかにした。ただ国際原子力機関(IAEA)は「安全への重大な影響」はないとしている。

ウクレネルゴはフェイスブック(Facebook)を通じ、チェルノブイリ原発は「完全に電力供給網との接続が断たれている」とし、現地で軍事作戦が続いているため「復旧作業は不可能」と説明。

IAEAはツイッター(Twitter)への投稿で、ウクライナから停電について報告があったとした上で、「本件でIAEAは、安全への重大な影響があるとは認識していない」との見解を示した。(c)AFP


9日といえば、

ザポリージャ原発のウクライナ兵が武器を捨て帰宅を許されて、ロシア国家警備隊の完全管理下に置かれた日です。
そして、敷地内に米国製も含めた大量の武器が見つかり、
燃料をロシア製からアメリカ製に変更する実験が行われていたこと、
11日に、ウクライナ原子力発電公社が、ロシアからの核燃料購入を完全に停止したことを、
こちらに書きました。




ベラルーシからの電力供給ーなぜ報道されない?

さて4日のザポリージャ原発付近の火災に続いて
またもや世界中が、
1986年のチェルノブイリ原発事故や、2011年の東電福島原発事故の再来という悪夢に怯えるようになった

同じ9日、
Interfaxはウクライナからの情報に加えて、ロシアからの情報も伝えていました。

ロシアのパンコフ国防副大臣:

ウクライナの民族主義者が、またもや極めて危険な挑発行為をおこなったことをお伝えしなければならないのは、大変遺憾である。
彼らはチェルノブイリ原子力発電所で、電力を供給する変電所と送電線に危害を与えた

ロシアの専門家は、バックアップのディーゼル発電機の電源に切り替えるという迅速な措置をとった。

ウクライナ側は現在、修理の手配を避けるために全力を尽くしている。


ロシアのソローキン・エネルギー副大臣:

ウクライナの民族主義者の攻撃を受けたチェルノブイリ原子力発電所への電力供給を回復するため、
ベラルーシ側が既に、ベラルーシ送電網からの常時接続による電力供給復旧の準備を速やかに行っている


ウクライナの原発なのに、
ロシアとベラルーシが電力供給の回復に尽力し、
ウクライナは修理を避けているとは、奇妙ですよね。

ウクライナの元首相が、「ザポリージャ原発の妨害工作は、ゼレンスキー大統領が計画した挑発行為だった」と述べていたことを思い出します。



電力供給が再開したのはいつ?


3月13日(日)ウクライナのハルシュチェンコ・エネルギー相が、

ウクライナ電力公社(Ukrenergo)の専門家と、我が国の原子力専門家、電気技師の並々ならぬ努力により
本日、チェルノブイリ原子力発電所への電力供給が再開された」とフェイスブックに書き込んだそうで、

 一般的には、13日再開が公式発表のような扱いで報道されているようです。



 一方、3月10日のInterfaxによると

ベラルーシのルカシェンコ大統領がロシアのプーチン大統領とチェルノブイリ原子力発電所の状況について話し合い、ベラルーシの専門家にチェルノブイリ原子力発電所への電力供給を組織するよう命じた
(ソ連時代に使われなくなった古い送電線で、ベラルーシとつながっていて良かったですね!)

⬇️

ロシアのグラブチャク・エネルギー副大臣10日
「ベラルーシがチェルノブイリ原子力発電所に電力を供給した」と、記者団に語った。


⬇️


ロシア国防省は、チェルノブイリ原発付近の損傷した送電線を、ウクライナのチームが修理することを許可したと発表。


⬆️

ちなみにウクライナの原子力規制当局SNRIUは、

ウクライナ電力公社Ukrenergoによると、同地域での戦闘行為により、電力供給回復のための修理活動が不可能になっている」と発表していました。

その後、SNRIUからのチェルノブイリ原発に関する報告は、
11日に「緊急電源を供給するディーゼル発電機用の燃料が、原子力発電所の敷地内に追加供給された。サイトへの外部電源の復旧を試みている」旨が発表されて以来、15日現在まで更新されていません。
すなわち、復旧したという報告がまだないのです。


IAEAは10日

「グロッシ事務局長が

同原発の電力が復旧したという報告を承知しており、確認を取っているところだと述べた」と、
ウクライナの13日とは異なり、10日の復旧をほのめかしていますが、

誰が報告したのかがわかりません。

大抵、「ウクライナ当局からの報告」などと書かれているので、ここだけ不自然な印象を受けます。


しかも、SNRIU、ウクライナの大臣やIAEAが、

「ベラルーシが電力を供給した」と発表しないのはなぜでしょうか。



再度の停電と復旧

14日にドイツで、「チェルノブイリ原発が再度停電」というニュースがありました。

ウクライナの電力会社は、9日の停電同様「ロシア軍が電線を破損した」と言ったようですが、

そもそもプーチン大統領がベラルーシの大統領と会談までして電力供給に尽力したロシアが、
なぜまた停電を起こす必要があるでしょうか。

ウクライナの電力会社が、日本の電力会社よりも正直な報告をするとは思えないので、
「前日の夕方、ウクライナの専門家がロシア軍の支配地域にある高圧線を修理したばかりだったが、再びそこに行かなければならない」
という記事の内容からみて、
せっかくロシアがウクライナの専門家が修理することを許可したのに、ちゃんと修理できていなかったのではないかという気がします。


この件では、ロシアからの発表は見つかりませんでしたが、


15日にベラルーシのエネルギー省が発表したInterfaxの報道がありました。

チェルノブイリ原子力発電所への電力供給は完全に復旧している。

現在、ベラルーシの電力網から同原発の施設に電力が供給されている」



ロシアとベラルーシの協同は、とても興味深いです。 




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チェルノブイリ原発で核兵器製造?



RTの記事「疑惑:ウクライナが米国から兵器級プルトニウムを受け取った疑い」に、驚くことが書かれていました。


放射線量が高いチェルノブイリ原発の一帯では、カムフラージュできるため、
汚い爆弾の製造とプルトニウムの抽出の両方がおこなわれていたようだ。

この記事はとても長いので、ウクライナの 核武装についてはまた別に書きたいと思います。

チェルノブイリ原発周辺の放射線量上昇に関するドイツの報道 

を書いたときは、西側のドイツの報道しか調べず、
ウクライナ原子力当局の見方
「放射線レベルが上昇したのは、軍の大型車両が移動し、放射性物質の粉塵が舞い上がったため」
を鵜呑みにしてしまいましたが、

2月24日にモニタリング4カ所(下図の右下を除く)のデータが、
それぞれ65.5μSv/h, 54.2μSv/h, 58.8μSv/h, 5.1μSv/hと、
かなり高い数値になったのは、
もしかして「汚い爆弾の製造とプルトニウムの抽出」が原因だったという可能性はないでしょうか。


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2月25日付ロイターの以下の記事に、
毎時最大9.46マイクロシーベルトとあって、
上図の毎時60マイクロシーベルト前後の値が載っていないのは、
ウクライナの規制当局が、IAEAに最大値を報告しなかったのでしょう。

規制当局が報告した毎時最大9.46マイクロシーベルトという数値は低く、
立ち入り禁止区域が設定されて以来測定された運用範囲内にとどまっている」と
IAEAは述べている。


SNRIUが25日に出した報告には、

・オンラインで公開されている立ち入り禁止区域の自動放射線モニタリングシステムのデータにおいて、

相当数の観測地点でガンマ線量率が管理レベル(赤い点)を超えた


・この領域での占領と軍事戦闘のために、立ち入り禁止区域の放射線バックグラウンドの変化の理由を確定することは、現在のところ不可能。


・エコセンターの専門家は、多数の無線重機が立ち入り禁止区域を移動したことによる土壌の表層の乱れや、大気汚染の増加によるものと考えている。


・チェルノブイリの核施設などの状態に変化はない。

とだけあって、数値は書かれていません。

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いずれにしても、どの組織も国際原子力マフィアには変わりありませんから、
公式に発表する内容を鵜呑みにしないよう気を付けたいと思います。



ロシアの空挺部隊がウクライナのチェルノブイリ原子力発電所周辺を完全に制圧したのは、2月24日でした。


国防省の報道官は、
民族主義的な組織や他のテロ組織による核の挑発を防ぐため、
ロシア空軍の隊員がチェルノブイリ原子力発電所を警備し、
原子力発電所警備大隊のウクライナ人と共同で行動する旨を述べました。


ロシアは「我々も原子力発電所の専門家も、1日に6回、放射線チェックを実施している」と、

放射線量の急激な上昇を否定していますが、表にでてこない情報を掴んでいるのではないでしょうか。



もう一つ、私が理由を知りたいと思っているのは、

24日、ウクライナ内務省がチェルノブイリ原発周辺の立ち入り禁止区域で戦術・特別演習を実施したことです。


ロシアのウクライナ侵攻はすでに懸念されており、

この区域はロシアにとって首都キエフ侵攻への最短距離と注目されていました。


国防相、陸軍の高官数名、警察、州兵、救急隊、国家警備隊、市民保護局の部隊などが参加し、

内務大臣は、「チェルノブイリ原子力発電所周辺の立ち入り禁止区域でこの規模の演習は初めてである」と強調したそうです。

出席した外国の大使とは、どこの国でしょうか。


練習・訓練内容は、航空偵察、街頭戦闘、退却する敵の破壊、建物の襲撃とその後の負傷者の避難、地雷除去の訓練など。

スナイパーもいたとか。

当局が公開したビデオでは、整地されたプリピャチ市内で迫撃砲が使用され、装甲車に乗った国家警備隊が前進する様子が映し出されたといいます。



チェルノブイリ原発には、まだまだ謎がありそうです。
posted by ecoyoko at 10:13| Comment(0) | 世界の動きを多角的にみよう | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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